経口カルプロフェン投与が正常な犬の眼圧に及ぼす影響
Effect of oral administration of carprofen on intraocular pressure in normal dogs
経口カルプロフェン投与が正常な犬の眼圧に及ぼす影響
Meekins JM, Overton TL, Rankin AJ, Roush JK. Effect of oral administration of carprofen on intraocular pressure in normal dogs. J Vet Pharmacol Ther. 2016;39(4):344-349. PMID: 26923773
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この研究の目的は、正常犬の眼圧に対するカルプロフェンの経口投与の影響を調べることであった。
12頭の若い成犬のビーグルを無作為に処置群(n=6)とコントロール群(n=6)に振り分けた。11日の順化期間後、処置群にはカルプロフェンを約2.2mg/kgで12時間毎に7日間経口投与し、コントロール群には薬剤を含まないプラセボジェルカプセルを12時間毎に7日間経口投与した。順化期間(1-11日目)、処置期間(12-18日目)、処置終了から48時間(19-20日目)に、1日3回(8am、2pm、8pm)リバウンドトノメーターで眼圧(IOP)を測定した。
処置期間中(12-18日)には、カルプロフェンを経口投与した犬の眼に対し、IOPの統計学的に有意な変化は見られなかった。4日目以降では、コントロール群に有意な日中のIOP変化は見られなかった。
カルプロフェンの12時間毎の7日間の経口投与は、正常なビーグル犬のIOPに影響を及ぼさなかった。少なくとも5日の順化期間の頻繁なIOP測定は、 IOP基準値の決定と、おそらく不安によるIOPの変化の影響を最小限にするために必要である。
Experimental Design | Randomized placebo-control trial |
P | 若い健常なビーグル犬12頭 |
I | カルプロフェンを約2.2mg/kgで12時間毎に7日間経口投与 |
C | プラセボ投与と比較して |
O | 眼圧測定値に影響があるか |
コメント
NSAIDsの点眼投与は房水の流出抵抗を増やし眼圧を上昇させると報告があるため、筆者らは内服のカルプロフェンが眼圧に影響があるかを検証しました。対象は身体検査、血液学検査(CBC、生化学)及び眼検査で異常のみられなかった1歳齢のビーグル(雌雄6頭ずつ)。ランダム化の方法は記述はありません。IOP測定者及びデータ解析者は治療割り当ての隠蔽化がされている。本研究では正常な若齢のビーグルにカルプロフェンを内服投与しても眼圧が変化しないことを示唆しているが、論文の考察にもあるように、臨床的には緑内障眼もしくは緑内障の素因がある眼において、カルプロフェンが眼圧を上昇させ緑内障を発症・悪化させることがあるかどうかが次の研究の課題でしょう。つまりこの研究では、そういった緑内障・緑内障素因のある動物に対して『カルプロフェンを経口投与しても眼圧に変化が見られないので大丈夫』という解釈はしてはいけません。また過去に報告があるように朝に眼圧が優位に高くなっていて、また順化によるIOP値の安定のために少なくとも4日は要していることから、環境や動物の精神状態など様々な要因で臨床的に眼圧は容易に変化することを示唆しているとも言えます。