睫毛疾患

Disorders of the cilia

概要

特徴・病態

通常の睫毛は眼瞼の皮膚縁に生え、その先端は角膜と反対側を向いている。異常睫毛は以下のいずれかに分類され、異常な睫毛もしくは被毛が角結膜を刺激する。

 

睫毛重生 Distichiasis
 マイボーム腺の開口部から睫毛が生えている状態。柔らかく長い睫毛重生はコッカースパニエル、プードルやゴールデンレトリーバーなどでみられ、多くが無症状で治療の必要はない。その他の犬種 (例えばイングリッシュ・ブルドッグなど) では短く硬い睫毛重生が角結膜を刺激し、臨床症状を示すため治療対象となる[9]
睫毛乱生 Trichiasis
 正常な位置の皮膚から生えている睫毛や被毛の向きが異常で、それらが角膜に接触している状態。短頭種の鼻雛壁や眼瞼欠損、眼瞼内反症が原因になることもある。
異所性睫毛 Ectopic cilia
マイボーム腺から生じた睫毛が、眼瞼結膜から出ているため角膜を刺激する。刺激性は強く、多くの場合で角膜潰瘍を引き起こす。

 

図1 異常睫毛の模式図 (参考文献4:図3-6より引用)

A          正常な睫毛。マイボーム腺開口部と睫毛の位置に注目。

B          睫毛重生。睫毛がマイボーム腺の開口部から出ており、その先端が角膜に向かう。

C          睫毛乱生。正常な位置にある睫毛あるいは被毛が角膜に向かう。

D          睫毛はマイボーム腺から発生し、その先端が眼瞼結膜から角膜に向かう。

 

 

 

臨床症状

異常な睫毛・皮膚と角結膜との接触による。

●  流涙

●  角膜潰瘍、角膜色素沈着、角膜血管新生

●  結膜充血

●  眼瞼痙攣

 

診断

臨床症状に基づいて、細隙灯顕微鏡あるいは拡大鏡を用いて十分に観察し、異常睫毛を特定することで診断する。

 

 

図2 犬の上眼瞼の中央に発生した異所性睫毛(参考文献3:図14.16より引用)

 

 

 

治療

睫毛重生に対しては、抜毛による一時的な治療と、凍結手術、電気脱毛法、炭酸ガスレーザーや外科切除のような永久的な治療法がある。睫毛乱生には抜毛以外に外科的な睫毛乱生を起こしている構造の整復を行う。異所性睫毛には、外科手術による毛根を含めた組織の除去が適応となる[7]

 

図3 犬の異所性睫毛に対する凍結手術(参考文献1:図14.15より引用)

 

 

 

 

予後 

一時的な抜毛では数週間で睫毛が再度生える。一般的に手術手技が正確に実施された場合、予後は良好である。

 

 

REFERENCE
  1. Bettenay S, Mueller RS, Maggs DJ. Diseases of the Eyelids: In Maggs DJ, Miller PE, Ofri R (eds): Slatter’s fundamentals of veterinary ophthalmology6th ed. Saunders (2018).
  2. Maggs DJ. Eyelids: In Maggs DJ, Miller PE, Ofri R (eds): Slatter’s fundamentals of veterinary ophthalmology5th ed. Saunders (2013).
  3. Stades FC, van der Woerdt A. Diseases and Surgery of the Canine Eyelid. In Gelatt KN, Gilger BC, Kern TJ (eds): Veterinary Ophthalmology5th ed. Wiley-Blackwell (2013).
  4. 印牧信行、長谷川貴史. 眼科学―獣医学教育モデル・コア・カリキュラム準拠. Interzoo (2015).
  5. Bellhorn RW. Variation of canine distichiasis. J Am Vet Med Assoc. 1970;157(3):342-343.
  6. Gwin RM, Gelatt KN, Peiffer RL. Enophthalmia and entropion associated with an ectopic cilia of the upper lid in a dog. Vet Med Small Anim Clin. 1976;71(8):1098-1099.
  7. D’Anna N, Sapienza JS, Guandalini A, Guerriero A. Use of a dermal biopsy punch for removal of ectopic cilia in dogs: 19 cases. Vet Ophthalmol. 2007;10(1):65-67.
  8. Helper LC, Magrane WG. Ectopic cilia of the canine eyelid. J Small Anim Pract. 1970;11(3):185-189.
  9. Bedford PG. Eyelashes and adventitious cilia as causes of corneal irritation. J Small Anim Pract. 1971;12(1):11-17.

 

 

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