眼瞼外反症

眼瞼外反症

Ectropion

概要

特徴・病態

眼瞼外反症は眼瞼の外反であり、下眼瞼に発症する。多くが品種依存性の眼瞼の構造異常であり、複数の遺伝子が関連していると考えられている。顔面の皮膚にたるみのある犬種に多い。眼瞼裂の過長も原因の1つと考えられている。眼瞼内反症の過度な外科的矯正による瘢痕性眼瞼外反症も原因となる。

<好発犬種>

レトリーバー種 セント・バーナード グレート・デーン
マスチフ ブラッド・ハウンド スパニエル種
ニューファンドランド ブルドッグ

 

臨床症状

・ 軽度の眼瞼外反症では臨床症状を示さない
・ 重度の眼瞼外反症では、慢性的な角結膜炎や眼脂がみられる。
・ 不全閉瞼による涙液の蒸発、慢性的な角膜露出症がみられることもある。


若齢のラブラドールに認められた両側性の下眼瞼の眼瞼外反症 (参考文献2: 図6-27より引用)

 

診断

視診、臨床症状、病歴、品種に基づいて診断する。小眼球症、眼球癆、眼球陥凹(ホルネル症候群)などとの鑑別は重要である。

 

治療

臨床症状を認めるような中程度〜重度の眼瞼外反症に対しては外科手術を考慮する。頭蓋骨の成長が完了し、眼窩脂肪が認められる2〜2.5歳齢以降に矯正術を行うのが好ましい。 原因に対して様々な術式があるが、代表的なものとして、外眼瞼くさび状切除術、V to Y形成術、Kuhnt-Szymanowski法などがある。眼瞼外反症に対する過度の矯正は、より臨床症状の深刻な眼瞼内反症につながるため必ず避けるべきである。

 

予後

一般的に手術手技が正確に実施された場合、予後は良好である。

 

REFERENCE
  1. Bettenay S, Mueller RS, Maggs DJ. Diseases of the Eyelids: In Maggs DJ, Miller PE, Ofri R (eds): Slatter’s fundamentals of veterinary ophthalmology 6th ed. Saunders (2018).
  2. Maggs DJ. Eyelids: In Maggs DJ, Miller PE, Ofri R (eds): Slatter’s fundamentals of veterinary ophthalmology 5th ed. Saunders (2013).
  3. Stades FC, van der Woerdt A. Diseases and Surgery of the Canine Eyelid. In Gelatt KN, Gilger BC, Kern TJ (eds): Veterinary Ophthalmology 5th ed. Wiley-Blackwell (2013).
  4. 印牧信行、長谷川貴史. 眼科学―獣医学教育モデル・コア・カリキュラム準拠. Interzoo (2015).
  5. Sue Manning. The eyelids. In Gould D, McLellan GJ (eds): BSAVA Manual of Canine and Feline Ophthalmology 3rd ed. BSAVA (2014).

 

 

3+