犬の点状網膜出血と眼および全身性疾患に対する関連性:83例

Punctate retinal hemorrhage and its relation to ocular and systemic disease in dogs: 83 cases

犬の点状網膜出血と眼および全身性疾患に対する関連性:83例

Violette NP, Ledbetter EC. Punctate retinal hemorrhage and its relation to ocular and systemic disease in dogs: 83 cases. Vet Ophthalmol. 2018;21(3):233-239. PMID: 28799185

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目的

犬の点状網膜出血(PRH)の臨床的側面を記述すること

動物

PRHの犬83頭(119眼)

方法

2006~2015年にコーネル大学眼科でPRHと臨床的に診断された犬の医療記録を調べた。本研究では、PRHを 網膜出血≤1視神経乳頭径と定義し、他の後眼部疾患に罹患していた犬は除外された。併発している眼疾患、全身性疾患を含めた、シグナルメントと臨床的特徴を記録した。

結果

点状網膜出血は、83頭の犬の119眼で確認された。平均(±標準偏差)年齢は、10.0(±3.8)歳であった。雑種犬、ゴールデン・レトリーバー、ジャックラッセル・テリアとイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは、同期間に眼科を受診した集団と比較して、統計学的にその比率が高かった。出血部位は網膜の全ての部位で確認されその数は様々であった。78眼 (66%)で乾性角結膜炎、ぶどう膜炎や白内障を含む併発した眼疾患が認められた。50頭 (60%) の犬で、全身性疾患に罹患していた。そのうち、糖尿病、多発性骨髄腫、高血圧症はPRH集団で統計学的に比率が高かった。稀ではあるが、免疫介在性血小板減少症、レプトスピラ症、腫瘍の遠隔転移と血栓塞栓性疾患を含む重篤な全身性疾患がPRHの犬でみられた。

結論

犬のPRHのリスクは、ある眼疾患および全身性疾患で増加しているかもしれない。
犬ではPRHの存在は全身性の基礎疾患と関係していることがあり得るので、更なる臨床的な探索と検査を行うこと必要とされるかもしれない。


Experimental Design Retrospective cohort study
P 2006~2015年にコーネル大学眼科でPRHと臨床的に診断された犬83頭(119眼)
I
C 同時期に同大学の眼科を受診した犬7509頭
O PRHと併発する眼疾患及び全身性疾患の関連性

コメント

PRHと眼疾患および全身性疾患の関連性を調査した後ろ向きコホート研究です。50頭(60%) のPRHの犬で全身性疾患に罹患していたと報告しています。研究のLIMITATIONとしては、間接眼底検査がPRHを検出する上で優れた方法ではないこと、一貫したデータが全ての症例で利用できないことなど、回顧的研究であることが問題であるとDiscussionで述べられています。注意したい点としては、PRHを発見した症例の受診理由の一番多かったものが、白内障術後の定期検査です(20/83頭: 24%)。ですので、白内障手術自体も点状網膜出血のリスク因子として本研究の統計学的手法では除外できません。また大学病院という施設上、眼科以外の科で、網膜に点状病変が出る可能性のある全身性疾患を罹患している、もしくは疑われている犬が眼のチェックを受けた際のデータを含んでいることを考える必要があります。このようなバイアスのため、PRHの50頭(60%) の犬で全身性疾患を持っていたというのは、過大評価の可能性があります。臨床的には眼底出血が見られた場合は、全身性疾患(高血圧症など)を原因として鑑別診断リスト組み込むのが一般的です。

PRHに罹患していた31犬種:雑種犬(n = 21)、ゴールデン・レトリーバー(n = 9)、ラブラドール・レトリバー(n = 8)、シーズー(n = 8)、ジャック・ラッセル・テリア(n = 6)、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル(n = 5)、バセット・ハウンド(n = 2)、その他(n = 1ずつ)

(Figure 1より 点状網膜出血の眼底写真)

 

 

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