犬の緑内障に対するマイクロパルス経強膜光凝固術:12症例の予行研究結果
犬の緑内障に対するマイクロパルス経強膜光凝固術:12症例の予行研究結果
MicroPulse™ transscleral cyclophotocoagulation in the treatment of canine glaucoma: Preliminary results (12 dogs)
Sebbag L, Allbaugh RA, Strauss RA, et al. Vet Ophthalmol. 2018;30:86. / PMID:30109763
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目的:
緑内障の犬におけるMicroPulse™経強膜光凝固術(MP-TSCPC)の臨床応用と効果を記述すること。
動物:
2〜13歳(平均±標準偏差、7.2±3.8歳)の原発(n = 8)または続発(n = 4)緑内障の12匹の犬。
手順:
MP-TSCPCは、鎮静または全身麻酔下で行った。レーザーデューティサイクルは31.3%であり、レーザー出力は2000~2800mWであり、各半球は90~180秒間処理された。プローブは、3時方向と9時方向を残し「sweeping motion」で各4領域に適用した。
結果:
1眼あたりのMP-TSCPCの施行回数は1から3まで様々であった(1.4±0.7)。術後1~15日以内に11/12匹の犬(92%)において眼内圧(IOP)がコントロールされた(<25mmHg)。 1カ月目のIOPコントロールおよび反復処置間の持続時間は、高エネルギーレーザー(2800mW)で処置した眼で、2000~2500mWで処置した眼と比較して有意に長かった。長期間の追跡調査(315.3±100.7日)は、5/12(42%)でコントロールされたIOP、および4/8(50%)の犬で視覚の維持が認められた。失敗した症例では、3〜225日(109.1±93.7日)および28〜261日(114±101.6日)以内にIOPコントロールまたは視覚喪失が生じ、6匹の犬で救済処置が行われた。合併症は、角膜知覚の低下(92% )術後高眼圧症(50%)、神経栄養性角膜潰瘍(25%)、乾性角結膜炎(8%)、および虹彩ルベオーシス(8%)であった。
結論:
MP-TSCPCは、犬の緑内障を管理するための実行可能なツールであるが、長期的な効果を改善し、合併症率を低下させるためのさらなる研究が必要である。
マイクロパルス経強膜光凝固術の犬の緑内障症例に対する初の報告です。鎮静下で繰り返し処置することができるのは大きなメリットです。眼圧のコントロールは多くの症例で認められた (92%: 11/12頭) のに対して、合併症の高さが伺えます。例として角膜知覚の低下(n = 11; 92%)、前部ぶどう膜炎(n = 8; 67%)、栄養性角膜炎 (n = 3; 25%)などがあげられます。
将来的に有望な治療法の一つですが、この研究のみからでは他の治療法より有効かどうか判断するには、さらなる研究が必要です。また、より良い研究デザインが治療効果の判定には必要でしょう。この研究では、非常に多数の交絡因子が混在しています。例として、点眼薬の種類、マイクロパルス処置の設定、緑内障のタイプ、犬種、診断までの期間などがあげられます。
また合併症の頻度は高く、おそらくさらなる手技的な改良(照射位置や出力など)の改良が必要でしょう。著者らはLimitationとして、サンプルサイズが小さいこととフォローアップ期間が短いことをあげています。
結論では、2800 mW-180秒-眼球半周の処置が提案されています。眼圧上昇後にどれだけ早く適切な処置が受けられるかがその後の眼圧と視覚の維持に大きく影響しているようにデータからよみとれます。
http://www.iridex.com/Products/GlaucomaDevices/CYCLOG6MicroPulseP3.aspx より引用