内分泌疾患の犬では涙液産生が減少する?
3種の異なる内分泌疾患の犬に認められた涙液産生の減少
Reduced tear production in three canine endocrinopathies
Williams DL, Pierce V, Mellor P, Heath MF.J Small Anim Pract. 2007;48(5):252-256. PMID: 17425694
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目的:
過去の報告から甲状腺機能低下症および糖尿病患者は、乾性角結膜炎を発症しやすいと考えられてきた。この研究の目的は、糖尿病、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症の犬の涙液産生量をシルマーティアテスト(STT)を用いて測定し、その結果を正常犬群のSTT数値の結果と比較することである。
方法:
副腎皮質機能亢進症の犬16頭、糖尿病の犬18頭、甲状腺機能低下症の犬12頭およびコントロール犬100頭でSTTを実施した。糖尿病の犬18頭中12頭ではCochet Bonnet角膜知覚計を用いて角膜の知覚感受性も測定し、年齢と犬種が一致した正常犬と比較した。
結果:
甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、糖尿病の犬のSTT は、1分あたり各々平均+/-SD; 12.3+/-3.2mm、14.0+/-4.0mm、12.3+/-5.3mmであった。内分泌障害の犬全てで、STTの結果はコントロール群(19.6+/-4.2mm/分)よりも有意に低かった。 STT結果が5mm/分未満であり重度の乾性角結膜炎が明らかであったものは、甲状腺機能低下症の犬2頭と糖尿病の犬3頭のみであった。糖尿病の犬は対応したコントロール犬と比較して角膜知覚感受性が有意に減少していた。
臨床的意義:
この研究では、糖尿病、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症の犬で有意な涙液の産生減少が認められた。この涙液産生減少が生じるメカニズムを解明するためには、更なる研究が必要である。これらの内分泌障害が診断された動物では、臨床的な乾性角結膜炎に進行する可能性があるため、涙液産生の評価を実施されるべきである。